不動産の生前贈与は、遺産分割対策や税対策、事業承継対策等様々な目的のための手段として活用されますが、以下、主に遺産分割対策としての生前贈与について記載します。
遺産分割対策としての生前贈与
不動産をお持ちの方が亡くなられた場合、その不動産は相続の対象となり、相続人の方が複数いらっしゃる場合には、遺言がなければ、遺産分割協議によって、どのように相続するのか決める事になります。
相続人の皆様の関係が良好である場合には、争いになる可能性は低いものと存じますが、疎遠になっている方がいる場合、相続人の中に認知症の方がいらっしゃる場合などには、速やかに遺産分割協議がまとまらない恐れがあります。
すでに、ご自宅は特定の方に引き継ぎたいという想いがお有り方は生前贈与を活用することもご検討すべきかもしれません。
例えば、ご自宅不動産甲土地建物について、下記のような相続が発生した場合、
被相続人(亡くなられた方)Xさん | ||
相続人 | 現配偶者Yさん | 甲土地建物に居住 |
相続人 | 子Aさん(前配偶者との間の子) | 別居 |
相続人 | 子Bさん(Yさんとの間の子) | 別居 |
<各人の意向>
Yさん・Bさん:「Yが相続し、Yが居住継続」
Aさん:「不動産を売却し、その代金を法定相続分に応じて分割」
このような場合、遺産分割協議の際に、相続人間で意見が衝突してしまい、Aさんが自身の法定相続分に基づく持分を第三者に売却してしまったり、調停・審判といった裁判所を通した手続に移行せざるを得なくってしまう恐れがあります。
このような状況に備えて、あらかじめ生前対策として遺言や生前贈与による対策を講じておくべきものと存じます。
生前贈与の注意点
生前贈与を行うにあたっては下記にご注意いただく必要があります。
▮ 税金
暦年贈与や贈与税の配偶者控除、相続税(基礎控除や小規模宅地の特例)との比較、相続時精算課税制度の利用の判断、不動産取得税や登録免許税等々、各種税金を考慮しなければ、負担が重くなってしまう可能性があります。そのため、必ず税理士の方等専門家の方にアドバイスを頂いてからご実行ください。
▮ 遺留分
遺留分とは、兄弟姉妹を除く相続人が、相続財産から最低限得ることができる取り分のことです。
贈与が遺留分を侵害する場合、下記贈与は遺留分算定の基礎財産とされます。
- 相続人に対する、相続開始前10年以内にされた特別受益としての贈与
- 相続人以外に対し、相続開始前1年以内にされた贈与
- 時期を問わず、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知って行った贈与
- 不相当な対価による処分
遺留分侵害は金銭で解決することが可能ですので、不動産を贈与する場合には、共同相続人の遺留分も考慮して遺留分相当額の現金等を遺しておくことや生命保険を活用するなど、対策を検討しておくべきものと存じます。
▮ 特別受益の持戻し
共同相続人の中に、婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた方がいる場合、相続財産に贈与の価額が加算された額が相続財産とみなされ、それを基礎として各人の相続分が決まります。この場合、贈与額が自身の相続分の額以上である場合、贈与を受けた方はそれ以上相続財産を得ることはできなくなります。
ただし、被相続人の方が遺言等により、持戻しをさせない意思表示をすることで回避することが可能です。
▮ 住宅ローンが残っている場合
住宅ローンが残っており、担保権が設定された不動産を贈与することは、法律上は可能ですが、住宅ローンの契約条項によって担保権者である金融機関の承諾が必要とされていることがほとんどです。
承諾を得られないまま手続きを進めてしまうと、住宅ローンの一括返済を求めらるなどのリスクがあります。
このような場合には、受贈者の方名義でローンを組み直す等の方法を検討する必要があるものと存じます。
不動産の生前贈与の登記手続
1.贈与契約
贈与する方(贈与者)と贈与を受ける方(受贈者)との間で贈与契約を締結します。
この際、後々のトラブル防止のため契約書を書面化しておくことが重要です。
2.必要書類
- 登記済証または登記識別情報
- 贈与者の印鑑証明書(3か月以内)
- 受贈者の住民票
- 固定資産税の評価証明書・納税通知書(最新年度分)
- 押印書類(登記原因証明情報・登記委任状) ※押印書類は弊所にて作成致します。
3.本人確認・意思確認、書類への押印
ご面談の上、ご本人様確認書類(運転免許証、マイナンバーカード等)をご提示いただき、ご確認させていただきます。また、あわせて必要書類の受領および押印書類に押印いただきます。
4.登記申請
登記申請にあたり、固定資産税の評価額×2% の登録免許税がかかります。
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