株式会社の役員変更登記は、取締役か、監査役か、またその原因や会社の機関設計、定款の定め方に応じて必要な書類や押印すべき印鑑が変わります。
また会社法上、その原因発生後2週間以内に登記することが求められており、この期間を超過する場合は過料に処せられる場合があります。
なお、下記記載は「監査役会設置会社」「監査等委員会設置会社」「委員会設置会社」以外の会社を想定しております。
取締役の変更登記
就任
1.新規就任
[選任手続]
1.株主総会(普通決議)による選任(任期の起算日は選任日)
2.当該取締役の就任承諾(就任日は就任承諾日)
※就任日は登記されますが、選任日は登記されません。選任日と就任承諾日が異なる場合、登記事項証明書からでは任期の満了日が判然と致しませんので選任時の株主総会議事録を確認させていただく場合がございます。
[必要書類]
<取締役会非設置会社>
□ 株主総会議事録
□ 株主リスト
□ 就任承諾書(個人実印押印)
□ 印鑑証明書(3か月以内)
<取締役会設置会社>
□ 株主総会議事録
□ 株主リスト
□ 就任承諾書(認印可)
□ 本人確認証明書
※本人確認証明書
本人確認証明書は、就任承諾書の「住所」「氏名」と当該書類の「住所」「氏名」が一致している必要があります。
商業登記規則第61条第7項
設立の登記又は取締役、監査役若しくは執行役の就任(再任を除く。)による変更の登記の申請書には、設立時取締役、設立時監査役、設立時執行役、取締役、監査役又は執行役(以下この項において「取締役等」という。)が就任を承諾したことを証する書面に記載した氏名及び住所と同一の氏名及び住所が記載されている市町村長その他の公務員が職務上作成した証明書(当該取締役等が原本と相違がない旨を記載した謄本を含む。)を添付しなければならない。ただし、登記の申請書に第四項(第五項において読み替えて適用される場合を含む。)又は前項の規定により当該取締役等の印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付する場合は、この限りでない。
具体的には下記のものが本人確認証明書になり得ます。
□免許証(表裏)・マイナンバーカード(表)・ 在留カード(表裏)のコピーに、
本人が「原本に相違ない」旨を記載し、日付記入及び署名または記名押印したもの
※マイナンバーの通知カード、日本のパスポート(住所が手書きとなるため)は認められません。
□住民票の写し(マイナンバーの記載のないもの)
□戸籍附票
□印鑑証明書
海外在住の方
□ 外国に居住する取締役等の氏名及び住所が記載されている日本国領事が作成した証明書
□ 署名証明書
□ 宣誓供述書
外国官憲の作成に 係る当該取締役等の氏名及び住所が記載された証明書(宣誓供述証明書を含む )のほか,外国官憲の発行に係る身分証明書等(住所の記載があるものに限る )の謄本で,当該取締役等が「原本と相違がない」旨を記載し,署名又は記名押印したものが本人確認証明書に該当する。
(平成27年2月20日 法務省民商第18号通達 )
※外国語表記の証明書類には日本語の訳文(訳者による訳文である旨の記載および署名押印)が必要です。
2.重任
重任とは定時総会終結をもって任期満了予定の役員が、改めてその役員として就任することです。
[選任手続]
1.株主総会(普通決議)による選任
2.当該監査役の就任承諾
[必要書類]
□ 株主総会議事録
□ 株主リスト
□ 就任承諾書(認印可)
※本人確認証明書は新規就任時に提出済みですので改めての添付は不要です。
退任
退任とは役員を退任することですが、その原因により必要書類が変わります。
[主な原因:必要書類]
□辞任:辞任届
□任期満了:定時株主総会議事録(議事録の記載によっては定款が必要になる場合があります)
□死亡:死亡を証する書面(住民票除票・戸籍(除籍)謄本・ご家族からの死亡届等)
□解任:株主総会議事録(普通決議。ただし累積投票により選任された取締役の解任は特別決議)
補欠規定・増員規定がある場合
監査役の変更登記
就任
1.新規就任
[選任手続]
1.株主総会(普通決議)による選任
2.当該監査役の就任承諾
[必要書類]
□株主総会議事録
□就任承諾書(認印可)
□本人確認証明書
2.重任
[選任手続]
1.株主総会(普通決議)による選任(任期の起算日は選任日)
2.当該取締役の就任承諾(就任日は就任承諾日)
[必要書類]
□定時株主総会議事録
□就任承諾書(認印可)
<特殊な必要書類>
□ 定款(定款に監査役の権限について会計に限定する旨の記載がある場合)
□ 監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款の定めがあることを証する書面(定款に監査役の権限について会計に限定する旨の記載がない場合 )
□ 株主総会議事録(会計限定規定設定の定款変更決議をした株主総会議事録)
平成27年5月1日以降、監査役の権限について会計に関するものに限定する場合はその旨が登記事項となりました。
この登記は、平成27年5月1日以降、最初に監査役の就任・重任又は退任登記を申請する際に、あわせて申請する必要があります。
この登記が必要な株式会社は以下のとおりです。
平成18年4月30日以前に設立
1.資本金1億円以下(平成18年5月1日時点において資本金1億円以下、かつ最終の貸借対照表の負債の部に計上した金額の合計が200億円未満)
2.株式全部に譲渡制限規定あり(平成18年4月30日以前から現在まで)
3.平成18年5月1日以降、監査役の監査の範囲について定款変更していない
4.監査役会・会計監査人非設置会社
平成18年5月1日以降に設立 または
平成18年5月1日以降に株式の譲渡制限規定を設定
1.株式全部に譲渡制限規定があり
2.監査役会・会計監査人非設置会社
3.監査役の業務範囲に関し会計限定規定あり
退任
[主な原因:必要書類]
□辞任:辞任届
□任期満了:定時株主総会議事録(議事録の記載によっては定款が必要になる場合があります)
□死亡:死亡を証する書面(住民票除票・戸籍(除籍)謄本・ご家族からの死亡届等)
□解任:株主総会議事録(特別決議)
代表取締役の変更登記
就任
新規就任 (代表取締役が交代する場合)
<取締役会非設置会社>
定款の規定によって選任方法及び必要書類が変わります。また辞任時の手続や必要書類も変わります。
各自代表
[選任手続]:不要です。
取締役全員が代表取締役となりますので取締役の選任決議が代表取締役の選任決議も兼ねることになります。株主兼取締役1名の会社様は各自代表のケースが多いものと存じます。
[必要書類]
□取締役選任にかかる株主総会議事録(議長及び出席取締役全員が個人実印で押印)
□取締役としての就任承諾書(個人実印押印)
□印鑑届書(印鑑届出者につき)
□印鑑証明書(新規就任取締役全員分)
定款の定めによる取締役による互選
[選任手続]
1.取締役の過半数で代表取締役を決定
2.当該代表取締役の就任承諾
[必要書類]
□定款
□取締役による互選書
原則:
取締役全員が個人実印で押印
例外:
前代表取締役が取締役として残留し、前代表取締役が会社実印を押印する場合は他の取締役は認印での押印可
□代表取締役の就任承諾書(認印可)
□印鑑届書
□印鑑証明書 (上記互選書につき、原則時:取締役全員分、例外時:新代表取締役分)
定款の定めによる株主総会決議
[選任手続]:原則株主総会の普通決議
[必要書類]
□株主総会議事録
原則:
議長及び出席取締役全員が個人実印で押印
例外:
前代表取締役が取締役として残留し、前代表取締役が会社実印を押印する場合は議長及び他の役員は認印で押印可
□株主リスト
□印鑑届書
□印鑑証明書(上記株主総会議事録につき、原則時:取締役全員分、例外時:新代表取締役分)
定款(直接氏名記載)
[選任手続]:株主総会による定款変更(特別決議)によって代表取締役を決定
[必要書類]
□株主総会議事録
原則:
議長及び出席取締役全員が個人実印で押印
例外:
前代表取締役が取締役として残留し、前代表取締役が会社実印を押印する場合は議長及び他の取締役は認印で押印可
□株主リスト
□印鑑届書
□印鑑証明書 (上記株主総会議事録につき、原則時:取締役・監査役全員分、例外時:新代表取締役分)
<取締役会設置会社>
[選定手続]
1.取締役会決議による選定
※ 原則、議決に加わることのできる取締役の過半数が出席し、出席した取締役の過半数をもって行います(会社法第369条第1項) 。
2.当該代表取締役の就任承諾
[必要書類]
□取締役会議事録
原則:
出席取締役及び監査役が個人実印で押印
例外:
前代表取締役が取締役として残留し、前代表取締役が会社実印を押印する場合は議長及び他の役員は認印で押印可
□代表取締役の就任承諾書(新代表取締役の個人実印押印)
□印鑑届書
□印鑑証明書(上記取締役会議事録につき、原則時:取締役・監査役全員分、例外時:新代表取締役分)
重任
[選任・選定手続]:新規就任の場合と同じです。
[必要書類]
□各選任書類(新規就任時と同じ)
□各会議出席役員の印鑑証明書
重任代表取締役が選任・選定書類に会社実印で押印した場合は添付省略可
□就任承諾書(認印可)
※また代表取締役は交代しませんので印鑑届書は不要です。
なお、代表取締役選任にかかる議事録等の印鑑につき印鑑証明書の添付が求められる場合は下記のとおり定められております。
商業登記規則第61条第6項
代表取締役又は代表執行役の就任による変更の登記の申請書には、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ当該各号に定める印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。ただし、当該印鑑と変更前の代表取締役又は代表執行役(取締役を兼ねる者に限る。)が登記所に提出している印鑑とが同一であるときは、この限りでない。
一 株主総会又は種類株主総会の決議によつて代表取締役を定めた場合
議長及び出席した取締役が株主総会又は種類株主総会の議事録に押印した印鑑
二 取締役の互選によつて代表取締役を定めた場合
取締役がその互選を証する書面に押印した印鑑
三 取締役会の決議によつて代表取締役又は代表執行役を選定した場合
出席した取締役及び監査役が取締役会の議事録に押印した印鑑
退任
代表取締役の退任はパターンに応じて必要書類が変わります。主なパターンと必要書類を下記に記載します。
[パターン:必要書類]
□代表取締役である取締役の「辞任」「死亡」「解任」:下記いずれか
〇辞任:「辞任届(会社実印押印)」または「辞任届(個人実印押印)」及び「個人の印鑑証明書」
〇死亡:「死亡を証する書面」
〇解任:「株主総会議事録」・「株主リスト」
※この場合、取締役の退任原因は「辞任」「死亡」「解任」、代表取締役の退任原因は「資格喪失」となります。
□代表取締役の地位のみ辞任:さらに下記場合分けが必要です
〇株主総会または定款(直接記載)で選任された代表取締役:株主総会議事録・株主リスト
〇互選または取締役会で選任された代表取締役:下記いずれか
・(代表取締役としての)辞任届 (会社実印押印)
・(代表取締役としての)辞任届(個人実印押印)及び個人の印鑑証明書
なお、各自代表の場合、代表取締役の地位のみ辞任することはできません。
□代表取締役の解職
〇株主総会または定款(直接記載)で選任された代表取締役 : 株主総会議事録・株主リスト
〇取締役の互選により選任された代表取締役:取締役の決定書
〇取締役会議事録により選任された代表取締役:取締役会議事録
会計参与の変更登記
準備中
会計監査人の変更登記
会計監査人の任期は、選任後一年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までと法定されております(会社法第338条第1項)。
また、資格制限があり、公認会計士もしくは監査法人でなければ就任することができません(会社法第337条第1項)。
就任
新規就任
[選任手続]:原則、株主総会の普通決議によって選任します。
なお、株主総会へ提出する選任・解任及び再任しないことの議案の内容は、監査役設置会社であれば監査役(複数いるときは過半数)が決定します(会社法第344条第1項、第2項)。
[必要書類]
□株主総会議事録
□株主リスト
□就任承諾書(会計監査人の記名押印のある監査契約書でも可)
□会計士の資格を証する書面または監査法人の登記事項証明書(会社法人等番号による添付省略可)
重任
[選任手続]:不要です。
毎年定時株主総会の終結時に任期が満了しますが、再任しないとの決議をしない限りは自動的に重任扱いとなります。
[必要書類]
□株主総会議事録(再任しない旨の決議がないことの証明として)
□ 会計士の資格を証する書面または監査法人の登記事項証明書(会社法人等番号による添付省略可)
※選任決議がないため、株主リストや就任承諾書は不要です。
退任
[退任事由:必要書類]
□辞任:辞任届
□任期満了:定時株主総会議事録(再任しない旨の決議)※株主リストは不要(登記研究832号)
□死亡:死亡を証する書面
□解任
〇株主総会による解任:株主総会議事録・株主リスト
〇監査役等による解任:監査役全員の同意書
退任と権利義務役員について
取締役が辞任した場合のように退任による役員変更登記を行うべき事由が発生した際に、後任となる方が決まっていないため、法律や定款の員数を満たすことができない場合があります。
このような場合、後任の方を選任したり、員数を満たすように定款変更をしたりするまでの間、当該役員の退任登記を行うことはできず、当該役員はいまだ役員としての権利義務を有することになります(会社法第346条第1項)。
その後、後任が決まる等した場合には、退任事由が発生した日をもって退任の登記を行います。
なお、会計監査人については、権利義務役員に関する規定は適用されず、後任が決まっていなくても退任の登記が可能ですが、この場合は、監査役が仮会計監査人を選任しなければなりません(会社法第346条第4項)。
役員変更登記の登録免許税
□ 資本金1億円以下:1万円
□ 資本金1億円超:3万円
(登録税別表1.24(1)カ)
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