相続放棄とは
相続放棄とは、相続発生後、原則、自分が相続人であると知った時から3ヶ月(熟慮期間)以内に家庭裁判所に申述して、相続財産も相続債務も一切相続しないことにする手続です。
遺産分割の結果、何も相続しなかったという場合は、法律上の相続放棄ではありません。財産は引き継がなかったとしても、債務は引き継ぐことになりますので注意が必要です。
相続放棄の手続
▮必要書類
相続放棄の申立てにあたり必要書類としては共通して必要な書類は下記のとおりですが、被相続人(亡くなられた方)と相続放棄される方との関係性によっては、さらに戸籍謄本等が追加されます。
- 相続放棄の申述書(収入印紙800円、84円切手3枚(※札幌家裁))
- 被相続人(亡くなられた方)の住民票の除票
- 放棄する方の現在の戸籍謄本
- 被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍)謄本
▮手続
- 必要書類の収集
- 相続放棄の申述書の作成
- 家庭裁判所へ申述書および必要書類の提出
- 家庭裁判所からの照会書への回答
- 家庭裁判所から「相続放棄申述受理通知書」の送付により手続完了
「相続放棄申述受理通知書」は、被相続人の債権者等金融機関への提出や他の相続人による相続登記の際に使用することがあり、また再発行できませんので注意して保管願います。
相続放棄が認められない場合
1.熟慮期間を経過した場合
▮相続放棄ができる期間
(相続の承認又は放棄をすべき期間)
民法第915条
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。
2 相続人は、相続の承認又は放棄をする前に、相続財産の調査をすることができる。
この3か月の期間を熟慮期間といいますが、熟慮期間中に相続放棄を行わなければ、相続することを承認したものとされます。
そのため、熟慮期間中に相続放棄を行わなかった場合は、相続債務を弁済しなければならなくなります。
熟慮期間3か月は、一見すると十分な期間のように思われますが、実際には、ご葬儀や法要もあり、また日常生活もあります。
その中で財産や債務の調査を行い、相続放棄をすると決めて必要書類を集めて家庭裁判所へ申述手続を行わなければならないとすると、3ヶ月という期間は存外短く感じられます。
ご自身で手続を行うことが難しいと感じたら、速やかに専門家へご相談されることをお勧め致します。
▮熟慮期間の伸長申立
上記条文の1項ただし書きのとおり、家庭裁判所へ申立てを行い、家庭裁判所は相続財産の構成の複雑性、所在場所、相続人の数、海外や遠隔地居住の状況等を考慮して、財産調査に時間がかかる等の理由が認められれば、通常1か月~3か月ほどの期間の伸長が認められます。
なお、期間伸長の申立ても熟慮期間中に行う必要がありますので注意が必要です。
▮相続発生後3か月経過した後の相続放棄
上記のとおり、原則として熟慮期間経過後の相続放棄は認められませんが、特別の事情があると認められれば、相続発生後3か月経過後の相続放棄が認められることがあります。
相続人が、自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に相続放棄をしなかったのが、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じたためであり、かつ、被相続人の生活歴、被相続人と相続人との間の交際状態その他諸般の状況からみて、その相続人に対し、相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があって、相続人において上記のように信じたことについて相当な理由があると認められるときには、相続放棄の熟慮期間は相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時、または通常これを認識し得べき時から起算すべきものである
最判昭和59年4月27日判決
上記判決により、下記要件を満たすことで、熟慮期間の起算点が相続人が相続財産の全部または一部の存在を認識した時、または通常これを認識し得べき時とされ、この時から3か月以内であれば、相続発生後3か月を経過した場合であっても相続放棄が認められることがあります。
- 相続人が、被相続人に相続財産が全く存在しないと信じ、信じたことについて相当な理由があると認められること
- 相続人に相続財産の有無の調査を期待することが著しく困難な事情があること
2.相続財産を処分した場合
▮相続放棄が認められなくなる相続財産の処分
下記例のように、相続することを前提とした行為や財産的価値のあるものを処分してしまう等、相続財産を一部でも処分をしてしまったときは、相続放棄が認められなくなってしまいかねず、また一度相続放棄が認められた後であっても、覆ってしまいかねませんのでご注意ください。
- 遺産分割協議の合意
- 預貯金の解約・払い戻し・名義変更
- 不動産の名義変更
- アパートの解約、相続財産からの滞納家賃の支払い
- 家具家電等の売却・廃棄処分
- 自動車の売却・廃車・名義変更
- 相続財産による借金の返済やカードローン、携帯代の支払・解約・名義変更 等々
▮相続放棄が認められうる相続財産の処分
一方、下記のような場合には、相続放棄が認められます。
- 相続財産による葬儀費用の支出、お墓の購入や仏壇の購入(ただし、高額な場合は要注意)
- 受取人が相続人である生命保険・死亡退職金・遺族年金の受領
3.背信的行為
相続放棄後であっても、被相続人の債権者を害するような、相続財産の隠匿、私(ひそか)に消費、悪意による相続財産目録への不記載といった行為を行うと、相続放棄が認められなくなります。
費用
相続放棄申述書作成報酬
◎相続発生後3か月以内
お一人からのご依頼の場合 38,500円(税込)
同じ相続関係の中で +1名ごと22,000円(税込)加算
※3か月経過後の相続放棄の場合は、別途ご相談ください。
◎実費
その他、印紙代や郵送料、戸籍の収集等の実費がかかります。
※相続財産の処分等により、ご事情によっては、お引き受けできない場合がございますのでご容赦ください。
お問い合わせ
弊所では、相続放棄に必要な書類の収集、申述書の作成、照会書に対するご回答のサポート、熟慮期間延長の申立書類の作成等を行っております。
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