遺言には一定の方式が法律により定められており、その方式を満たさない場合、遺言に残したご意志が無効となってしまいかねません。以下、方式・要件と共に注意すべき点等を記載致します。なお、特別の方式による遺言についてはここでは省略致します。
遺言の方式
〇 各方式の比較
自筆証書遺言 | 公正証書遺言 | 秘密証書遺言 | |
---|---|---|---|
関与者 | 原則自身のみ | 公証人+証人2名 | 公証人+証人2名 |
費用 | あまりかからない | かかる | かかる |
形式要件 | 原則自身で確認 | 公証人が作成 | 自身で確認 |
紛失等 | おそれあり | おそれなし | おそれあり |
検認手続 | 原則必要 | 不要 | 必要 |
〇 自筆証書遺言
自筆証書遺言は、その名のとおり自筆にてお書き頂いた遺言です。他の方が介在する必要がなくご自身のみで作成可能です。
〇 自筆する事項
- 全文
- 日付
- 氏名
遺言に相続財産の全部又は一部の目録(財産目録)を添付する場合、この目録を自書する必要はありません(PCで作成した書面や不動産の登記事項証明書、預貯金通帳の写しの添付も可)。ただし、この場合、財産目録各ページに署名及び押印(自書によらない記載が両面にある場合には,両面にそれぞれ署名押印)が必要です。この押印については特に印鑑の指定はありません。また、添付にあたり契印も不要です。
〇 加除訂正
加除訂正を行う場合は下記ルールに従う必要があります。これは、自書によらない財産目録を訂正する場合も同様です。
- ご自身で訂正すること
- 変更の場所を指示し、変更したことを付記すること
- 付記した部分に署名すること
- 変更箇所に押印すること
〇 検認
遺言者の死後、自筆証書遺言がある場合には、遺言者の住所地を管轄する家庭裁判所において検認手続を行う必要があります。
手続は、申立⇒各相続人への検認期日の通知⇒検認期日において 相続人立ち合いのもと開封、といった流れで行われます。
検認終了後は、申立人へ遺言書(検認済証明書付)が返還され、出頭しなかった相続人や受遺者等に対して検認した旨の通知がされます。
検認手続自体は、遺言の有効無効には影響しませんが、遺言に従って不動産の名義を変更する場合には検認がなされた遺言書を添付する必要があります。
〇 自筆証書遺言の保管制度
これは令和2年7月10日からスタートする新たな制度です。端的に申し上げますと、作成した自筆証書遺言を法務局で保管してもらい、死後、相続人の方が遺言が保管されているか否か検索することで遺言の有無がわかる制度です。
この制度を利用できる遺言書は自筆証書遺言に限られ、法務省令で定められた様式による必要があります。
- 保管
保管については、法務大臣指定の法務局(遺言書保管所)において、遺言書保管官によりなされます。
- 申請
申請は、遺言者の住所、本籍地、遺言者所有の不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所の遺言書保管官に対して、ご自身が出頭して行います。これにより、成りすましによる遺言書の保管を防止します。
- 閲覧・保管の撤回
保管申請後、ご自身の出頭により保管されている遺言書の閲覧や保管を撤回することも可能です。
- 各種証明等
相続人や受遺者の方、遺言執行者等の関係者は、遺言者の死後、法務局に対して当該遺言書の保管の有無等に係る証明書(遺言書保管事実証明書)や遺言書の内容等が記載された証明書(遺言書情報証明書)の交付請求、遺言書の閲覧請求をすることができます。これらの請求は、当該遺言書の保管所でない法務局でも可能です。また遺言書情報証明書の交付や遺言書の閲覧が行われた場合、法務局から遺言者の相続人や受遺者、遺言執行者に対して遺言書が保管されている旨の通知がなされます。
- 検認
この制度を利用した場合は、その死後、当該自筆証書遺言について検認手続を行う必要がありません。
〇 公正証書遺言
証人2名の立ち合いのもと、遺言者が遺言の趣旨を公証人の面前で口授し、公証人がそれを筆記して遺言者及び証人に聞かせるか閲覧させるかした上で、各人が署名押印して作成する遺言の方式です。
遺言者が署名をすることができない場合や口がきけない場合、耳が聞こえない場合であっても作成することが可能です。
公正証書の原本は、公証役場に保管されるため、偽造・変造・破棄などの恐れはなく、また方式を満たさないことにより無効となることもありません。
作成費用は公証人手数料令により、財産を受け取る人の人数や財産規模に応じて定められます。
また、別途費用が必要となりますが、遺言者の方が公証役場に出向くことができない場合には、出張していただく事も可能です。
〇 秘密証書遺言
秘密証書遺言は下記方式による必要があります。(民法第970条第1項)
- 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
- 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
- 遺言者が、公証人一人及び証人二人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
- 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。
自筆証書遺言のように自書する必要はありませんのでPCで作成しても問題ございませんが、秘密証書遺言の方式を満たしていない場合であっても、自筆証書遺言の方式を満たしていれば自筆証書遺言として有効とされます。
また、秘密証書遺言には公証人の関与は必要ですが、作成そのものには関与しませんので、内容によっては無効となる恐れがあります。
保管は遺言者自身で行う必要があります。
なお、自筆証書と同様、検認手続が必要となります。
上記、比較表から考えますと、遺言者ご自身の死後の意志を示す手段としては、費用や手数はかかるものの、形式要件や紛失・偽造等のおそれのない公正証書遺言が適しているものと存じます。
費用
報酬(財産額が1億円を超える場合は、1千万円ごとに5,500円(消費税込)加算)
公正証書遺言(文案作成・証人立会料込み) 77,000円(消費税込)~
※その他、公証役場へのお支払いいただく費用や実費がかかります。
遺言保管制度を利用した自筆証書遺言 55,000円(消費税込)~
※その他、遺言保管所への保管手数料や実費がかかります。
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